[0152]表面応力を圧縮にするまたは引張応力を緩和する方法
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制約からいますぐに応力の改善サービスをご提供することはできませんが。簡単にできる応力の改善の情報をご提供します。
引張応力を緩和するまたは圧縮まで変化させる方法として、A.そもそも引張応力の発生を抑える。B.引張応力になってしまったものをどうにかする。があります。
ここではBの一部について解説します。引張応力になってしまったものをどうにかする方法には、
①熱処理する。(TSR Thermal Stress Release)
②たたく
③磨く
④のばす
⑤振動させる(VSR Vibration Stress Relief または Vibratory Stress Relief )
①熱処理 これは特に説明は不要ですね。炉や加熱装置が必要ですね。
②たたく ピーニングや様々な方法がありますが、ある程度の設備が必要です。ショットピーニングの残留応力測定 内部応力測定を参照ください。
④のばす 一旦降伏点以上の応力をかける方法ですが、専門知識がないと難しいと思います。一旦降伏点以上の応力をかけるために、引張応力が抜けて疲労寿命が延びる現象を利用します。コメット連続墜落事故が有名です。開発機体は、内圧試験をした後に疲労試験をしていました。量産機は、内圧試験をしないために開発機に比べて疲労寿命が短くなって墜落事故が起きたというわけです。残留応力と疲労寿命の関係を参照。
⑤振動させる。1960年代に米国の軍事造船技術から転用され、幾つかの機器が販売されていて、産業界でも使われているようです。
産業的に使われており確かに効果はある。1960年代に軍事造船技術からの転用
原理や物理的な現象の解明がすすんでいるとは言い難い。
残留応力低減の主用途は、溶接時の寸法精度向上で、疲労性能向上には懐疑的。理由 振動により大きな応力が導入されるため。
基本的にはTSR(Thermal Stress Relief)の代替と考えている人が多い。
1987.4.30 ASTMがMechanical Relaxation of Residual Stressのシンポジュウムを開催
その中のVibratory Stress Relief of Welding Parts で
VSRは確かに効果があったが、物理的に説明できないので他の構造や材料で効果があるかは推定できない。
その後の論文では、
Y. Yang, G. Jung, and R. Yancey, Finite Element Modeling of Vibratory Stress Relief after Welding, Proc of ASM, 7th International Conference; Trends in Welding Research 547-552 (2005)
VSRは、溶接部位周りの塑性変形により応力が低減する。
非共振周波数による振動の場合は、振動の振幅が要因となり、共振の場合は、周波数が大事でより小さな振幅でも効果を発揮する。加振時間はそれほど重要ではない。
TWI (The Welding Institute)のホームページで
VSRの用途は主に溶接時の寸法精度向上であり、疲労環境で使用するには注意が必要である。なぜならVSRによりかなりの応力が加えてある状態と考えられるからである。
この中で最も簡単にできるのが③磨くことです。ある種の研磨材を使うと降伏点近い圧縮の応力が表面に付加されることが知られています。
当社のウェブサイトでも研磨材入りのナイロンたわしの例があります。
具体的な適用方法は、以下の文章に載っています。
ただし研磨による圧縮応力は、深いところまでは入らないので、腐食等で表面が削られる場所では、定期的に表面に圧縮応力があるかの測定が必要です。また、研磨時、亀裂の元となる傷を残さないことが重要です。