[0021]なぜ低価格にしたのか
X線残留応力測定センター info@x-rsmc.com は、鋼とアルミを対象に安価かつ短納期の応力測定サービスをご提供しています。
測定のご依頼をされるお客様へX線応力測定(残留応力測定)なぜ低価格にしたのか説明するものです。
これまで
高価な測定→少ない測定数→現象がよくわからない。
当社の目指すところ
低価格な測定→十分な数の測定→現象の解明
なぜ十分な数の測定をしてほしいのか?→ 十分な測定を行った方が問題が解決している。
応力を知り尽くしている鉄鋼関係の研究所の応力のプロは、十分な数の測定を行なっています。
応力のプロは
現状の応力分布の予想ができる。
十分な数のデータを測定する。
一般ユーザーは、あまり測定数が多くありません。(当社の経験範囲)
応力分布の予想ができるだけの知識がない。
十分な数のデータを測定しない。
一般のユーザーでは、応力測定に関する評価が高くありません。その理由としては、データがばらつく、信頼性がない。
(非破壊検査協会アンケートの結果)
当社でのこれまでの経験からこの2つの原因は以下のように推定されます。
予想や現状の応力分布の説明ができるだけの測定データと知識が揃っていない。
そもそも応力は、3次元的にかなり複雑な分布をしている場合が多いが、そのような対象に数点を測定しただけで結論を出そうとしている。
解決策
①できるだけ多くの測定を行う。
②基本的な事象の応力分布を調べて対象となる事象の分布を説明する。
①できるだけ多くの測定を行う。
これが当社低価格の理由です。きちんとした評価をするためには、測定数が必要なのです。例えば
測定のばらつきだと思っていた現象は応力の複雑な分布であった。
応力分布の全貌が明らかにならなければ、不具合の原因もわからない。
私は長年、材料、溶接、残留応力を知り抜いた鉄の研究者の依頼を受けて残留応力測定を行ってきました。彼らの依頼の特徴は、1箇所の測定数は3点以上でサンプル数は2以上であることです。
1箇所の測定数を3点以上にすることにより、分布がある残留応力を正確に捉えることができますし、N数は2以上することにより、ばらつきや条件差の影響を見ることができます。例えば3点は分布がある方向に 0.5-2mm位ずらして3点測定します。
でもお金がかかります。1点当たり1万5千円だと、1箇所3点でN=2だと 1.5 X 6 = 9 万円にもなってしまいます。1つの部品に9万円はちょっと簡単には払えませんね。そこで当社は、1点当たり5000円にしたのです。これだと3万円になります。だいぶ良くなったと思います。自動測定ができる場合はさらにディスカウントします。
②基本的な事象の応力分布を調べて対象となる事象の分布を説明する。
当社では、技術解説のコーナーで溶接、熱処理等の応力分布を解説しています。参考にしてください。
正しい判断のために十分なデータが必要な例
鋼種 NAK55 0.2%耐力981MPa
表面はフライス加工がしてあり高い引張応力となっています。
1,2,3の場所のX、Y方向の応力を測定してみましょう。
X線の入射角がXのプラス方向に傾けた応力を
1+X,2+X,3+X
X線の入射角がXのマイナス方向に傾けた応力を
1-X,2-X,3-X
と記述してあり1+Xと1-Xの差が有意である場合は3軸の応力が発生しています。
下のグラフに測定結果を示します。
1,2の点はおおむね同様の傾向を示しています。フライス盤の加工の方向によりX,Yに差が発生しています。N+XとN-Xの差は小さくは3軸の応力は無視できるほど小さいと推定されます。
しかし、3は異常な値を示しています。この例では各点に関してX,YとX線の入射角度の正負を変えて十分な数の測定をしているので3が異常値だと判定できますが、これが測定の数が少ない場合は、判定できずに違った結論を導いてしまいます。
たまたま異常な値を測定することは、残留応力の測定ではよくあります。しかし、1点あたりの測定費が高価であるとそれを排除するための十分な測定ができません。測定費を下げて十分な数の測定をしてもらうのが当社の狙いです。
溶接部の残留応力測定は、分布を測定することが大切です。
以下は3箇所の溶接の応力を測定したグラフです。止端線から5mmの場所で溶接線と直交方向の応力を測定しました。3つの応力は異なるようにみえます。
図 1 止端から5mmだけを測定した場合の結果
でも1−10mmの分布を測定してみるとこの3つは同じ分布であることがわかります。止端の位置の決め方の誤差により違うようにみえたのです。
図 2 応力分布を測定した場合の結果
止端の決め方や溶接の形状等により残留応力分布は同じでも±1mm程度溶接の残留応力分布カーブがずれる場合はよくありますが。 図の3本の曲線は、同様の溶接で発生したものであることを近傍を数点測定していれば認識できますが、5mmだけ等1点だけだと認識できません。応力分布自体が71から201MPaに違っているように見えます。このように近傍の分布を測定することは、溶接部だけでなく、穿孔による応力変化等に対しても同様に大切です。
残留応力測定の値はバラつくとお悩みの方は、一度十分な数のデータを取ってみることをお勧めします。
どうやって低価格にできるのか?
私自身 応力測定に携わってきましたが、応力測定を外部に委託される技術者の方が、現状のサービスに満足されていないことは、わかっておりました。なぜなら応力は、3次元分布があり、さらに様々な条件で作られたサンプルが数多くあるのにもかかわらず、1点当の測定が1万円を超えるのは高すぎます。ここも測っておきたい、ここのデータも欲しいと測定点を増やしていくと、あっという間に、測定費用が数百万円にもなってしまいます。
もっと安価な残留応力測定サービスを実現できないかと日夜考えていました。そして測定に関するあらゆることをシンプルにして最適化した当社の応力測定サービスを考え出し、それを世に問うことにしました。様々な工夫を凝らしてありますが、一言で説明すると、「応力測定業界のLCC(格安航空会社)になる」です。
最新鋭の応力測定機器を導入して測定コストを減らし
測定以外のサービス等を減らす。
測定以外の経費を抑える。
これらの方策により大幅なコストダウンが可能になります。当初は、1測定あたり5000円です。自動測定の場合は、さらに割引をしています。LCCが海外旅行を身近なものにしたように当社は応力測定を身近なものにします。
外部への測定依頼が増えるとコスト削減にために機器購入を検討しますが。機器購入が本当にコスト削減になるのか? 単純に計算できないコスト。
当社へ測定を依頼する際のコストの多くの部分は人件費です。機器を購入すると測定の人件費は、外部支出から内部コストに変わる。つまり見えにくくなるが消滅する訳ではないのです。測定の労務が新たに発生します。
測定で問題を解決するには、材料、加工方法および溶接、疲労等の知識が必要ですが、そのような人材を応力測定に当てるべきか? 会社の本来業務に当てるべきではないか?
機器購入すると購入メーカー以外からの測定技術の導入が難しくなる。応力測定装置を購入すると外部への測定依頼は困難になり、自分で測定上の問題を解決しなくてはならなくなります。
機器の購入は本当にコスト削減になるのでしょうか?