【0056 測定例】加工・研磨による表面応力の変化
X線残留応力測定センターinfo@x-rsmc.com は、鋼とアルミを対象に安価かつ短納期の応力測定サービスをご提供しています。
測定値の解説のための情報をお客様にご提供します。
X線回折を用いた応力測定は、鋼の極表面 深さ数μmの範囲の応力を測定します。
加工により鋼の極表面の応力は大きく変化します。範囲は、だいたい引張の降伏応力から圧縮の降伏応力までです。これからそれを示します。
ここにモノタロウで購入したSS400の板材があります。SS400という規格は引張強さが400~501MPaで降伏応力が245MPa以上です。
降伏応力を引張強さの70%とすると、引張強さが500MPaの場合は、加工により表面の応力が-350MPa(圧縮)から+350MPa(引張)まで変化しうるということになります。
この試験片は、錆の影響等を調べるためにいろいろな実験を行っており所々錆びています。
今回は切断加工、機械研磨により大きく表面の応力が引張から圧縮に変わる部分をご紹介します。
A 切りっぱなしの表面
切断加工の表面は、切りっぱなしで加工痕が残っており大きな引張応力400MPaになっています。
B 電解研磨で加工層を取り除く
そこに電解研磨で表面の加工層を取り除くととほとんど応力がなくなります。-65MPa
C 研磨入りナイロンたわしで一定方向に磨く
酸化アルミナを研磨材にしたスコッチブライトで磨くと磨いた方向には引張応力(表示省略) 磨いた方向と直角方向には圧縮応力−262MPaが発生します。
このように鋼表面の応力は、加工、研磨により圧縮から引張りまで大きく変化します。したがって
疲労破壊や応力腐食割れが懸念される部品は、表面の応力を測定しておくことをお勧めします。
なぜ応力測定会社にとってこのような実験が重要であるか。
それは、測定サンプルに塗装等があり、化学的に除去できない場合は、機械的に除去します。その際にもその機械的な研磨の影響を把握するにより、機械的な研磨の影響を排した正しい測定を行うことができます。
また測定の目的により測定したい応力面を表面に露出させる必要があります。
応力腐食割れの場合は最表面に応力が重要なので加工があってもそのまま測定します。
変形の原因測定の測定、溶接による応力の測定の場合は、表面加工層を取り除く場合が多いと考えられます。