[0032]残留応力と疲労寿命の関係
X線残留応力測定センター info@x-rsmc.com は、鋼とアルミを対象に安価かつ短納期の応力測定サービスをご提供しています。
疲労破壊問題を解決しようとされているお客様向けに残留応力を疲労寿命の関係を解説します。
残留応力は疲労寿命に影響を及ぼします。ここでは、簡単にその解説をします。
応力ひずみ曲線、S−N曲線と疲労限度線図はわかるけど。なんで引張残留応力があると疲労寿命が短くなるか、いまいちわからない人向けです。簡単にわかりやく説明します。 上段の図1、図2、図3が負荷する応力の条件 下段がそれぞれ図4 引張試験の結果、図5 疲労試験の結果、図6疲労限度線図になっています。
引張試験は荷重(応力)を上げていきその時にひずみを計測します。応力は指数で表し引張強さを100とします。降伏応力は70とします。また引張強度と降伏応力の比率は、工場、船、様々な自動車部品の測定された応力値が妥当であるかどうかを瞬時に判定するために使っていた比率で当たらずとも遠からずだと思います。
疲労試験の際に、降伏応力程度をかけると約1万回で壊れます。百万回から一千万回壊れない応力が疲労限で引張り強度を100とすると、40~50位です。
平均応力つまり外部からの応力のオフセットを考慮したのが、疲労限度線図です。平均応力が0の場合が、許容範囲できる振幅が疲労限の40、平均応力が降伏応力70の場合が、許容範囲できる振幅が0とするのがゾーダーベルグ線図です。その線の内側(原点が含まれる側)が安全な範囲で外側がいつか壊れる範囲です。引張強度100とするとを実際の降伏応力は50から90まで位の幅があります。鋼種、熱処理等により変わります。引張強度が1500MPa位までの鋼材であれば、疲労限=0.5*引張強度との論文もあります。この文章は理解してもらうためのもので正確に詳細を知りたい方はたくさんある教科書や論文を参照してください。
疲労限度線図はほかにもグッドマン線図等がありますが、他に詳しく説明している文献等が数多くありますのでそれを見てください。
平均応力(残留)がない場合は、外部応力が疲労限以下の振幅20では、壊れません(緑の丸)。しかし溶接部のように降伏応力に近い残留応力がある場合は、それが平均応力として作用します。したがって60の溶接残留応力があるとすると振幅20の外部応力でも、ゾーダーベルグ線の外側になりいつか壊れます。(赤いバツ)
また、注意すべきは、応力変化が圧縮側でも破壊が起こるということです。振幅の1/2だけ平均応力が下がった両振りと同等になりますので、その条件が疲労限度線図の外側であれば破壊します。
S-N線図に関して詳しくは、当社の疲労破壊と原因調査を参照ください。
参考文献
疲労強度分布に注目したSN線 図の統計的決定法に関する研究
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsms1963/52/1/52_1_23/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjasnaoe1968/2001/190/2001_190_499/_pdf
破壊を防ぐにはどうすればいいの?
応力集中を緩和する。溶接部形状を変更しても効果がある場合があります。
残留応力を低く(圧縮に)して、平均応力を圧縮側に変化させる。ピーニング等により表面に圧縮応力を付与する方法があります。
降伏応力を上げる。加工硬化等により降伏応力を上げる方法があります。
対策には、その対策が有効な応力の範囲があります。まずはご相談を。
測定できるのか?
残留応力は、測定できます。形状に制限はあります。
外部応力は、外部応力を加えた状態で残留応力+外部応力を測定できることがあります。現場測定も対応します。
測定例
なお提示したデータは実際のデータを元に加工してある架空のデータです。
SUS304の構造物で面外ガセット継手に荷重がかかる場合の疲労対策要否検討例です。
溶接止端から5mmのところをひずみゲージで荷重あり、荷重なしで測定しましたが違いが測定できませんでした。荷重による応力計算値は100MPaです。
そこで、X線で残留応力を現場測定しました。5mm近傍は、荷重あり、荷重なしで差がないもののその他の場所は、計算値またはそれ以上の応力差が発生しています。
特に溶接止端線近傍は、応力が集中しており、さらに引張残留応力が高いため対策が必要です。
溶接止端 2mmの場所は平均応力が555MPa (620+490)/2、 振幅が65MPa(620-490)/2 の両振りと同等なので、かなり厳しい状況です。さらに止端に近づくにつれて応力集中が大きくなっていると考えられます。
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キーワード グッドマン線図 ゾーダーベルグ線図 疲労寿命 平均応力 残留応力